ブラックマーケティング 著者 中野信子×鳥山正博 書評 賢い人でも脳は簡単にだまされる。
隅々まで読んだ書評します。
ブラックマーケティングは、
発行日 2019年9月27日 初版発行
発行日 2019年11月5日 再版発行
著者 中野 信子 ・ 鳥山 正博
発行者 株式会社 KADOKAWA
ブラックマーケティングの導入文
消費社会の深層に潜む「その気」にさせる仕掛けと、脳が「その気」になってしまう現象とを、
つづつまの合う理論で結びつけ、より精度よく検証する必要があるのではないでしょうか。
脳科学をベースにマーケティングを組み立て直したら、マーケティングが無意識に避けていた悪徳商法などもすべて説明できるようになる。
それでこそ、マーケティングはサイエンスに近づく。
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— 鳥山正博 (@mtoritori) August 26, 2009
ブラックマーケティングの目次
序章 「悪のマーケティング」はなぜはびこるのか
■欲しくて買ったものを使わない不思議
■脳科学はいかにして発展してきたか
■希望がつくった脳科学ブーム
■大統領と家電の選び方は同じ!?
■「ブランドと消費行動」としての政治
■脳を、「その気」にさせる消費社会
■日本企業はマーケティングを信用していない?
■脳科学×マーケティング
■消費行動には必ず脳が関係する
■既存のマーケティング理論では説明できない現象が次々に
第一章 焦りをかき立て判断力を奪う商法にご用心
■「幸せ」の源泉
■セロトニンが不足すると
■”焦り”につけこむ商法
■プロスペクト理論
■「損」をチラつかせる商法
■タイムセールの原理
■良い子のマーケティング
■「0円以上で送料無料」の原理
■いくら稼いでも幸福にならない理由
■不安を煽るマーケティング
■手遅れの恐怖
■お母さんはお父さんよりも心配性
■ブームに乗るのは脳の「省エネ」
■コトラーのSTPに抜けているもの
■マーケティングの統一理論は打ち立て可能か
■霊感商法、開運商法
■宗教と悪徳商法
■洗脳
■救われるのは誰?
第二章 「ハマりたがる脳」を刺激する罠の数々
■脳のご褒美としての報酬系
■快楽の仕組み
■宝くじの期待値
■ギャンブルについて
■ハマるのは人だけではない
■ソシャゲの罠
■「ここで止めたらもたいない」の心理
■ゲーム依存の奥にあるもの
■ネット社会でもTV通販が強い理由
■買わずにいられない人たち
■選択しない心地よさ
■「依存」の正体
■意志の力でやめる難しさ
■脳の「新奇探索性」
■消費者をハッピーにするドーパミンの利用法
第三章 理性を麻痺させ「欲しい」と思わせる仕掛け
■愛と癒しの物質、オキシトシン
■オキシトシン商法
■日本は詐欺師天国?
■SF商法とは何か
■無料プレゼント攻勢
■「社会的報酬」の威力
■強力な「帰属」への欲求
■AKB商法
■「承認」よりも強い「関与」の快感
■「買った」のか「買わされた」のか
■既に買った商品のCMを一生懸命見る理由
■後妻ビジネス
■女スパイのテクニック
■出会い系アプリの闇
■愛に飢えた脳
■理想と現実の隙間に入り込むセールストーク
■愛情には「匂い」がある?
第四章 五感を使って他者を操る手法とは
■気まぐれな脳
■「賢い買い物」ができないときの脳の状態
■購買行動を左右するストーリー
■「塗り絵」手法
■「五感」を刺激して買い物モードへ誘導する
■サブリミナルについての誤解
■イヤーワーム
■隠しメッセージ
■思考モード「ファースト・アンド・スロー」
■選択肢過多効果
■認知負荷
■「実演販売」の威力
■共感させるコツ
■流行はなぜ生まれるのか
■口コミとネット社会
■ステルママーケティング
■脳とテクノロジー
■確証バイアス
■SNSの闇
■人の攻撃性
第五章 だまされやすさは遺伝子で決まる?
■海外市場と日本市場の大きな差異
■エピジェネティクス
■遺伝子プールの構成比における日米の差
■浮気遺伝子?
■「男脳」「女脳」は存在するのか?
■”脳科学神話”批判
■脳の違い「ではない」女性の傾向
■遺伝子が欲した企業風土
■助け合って生きてきた遺伝子
■開拓民の遺伝子
■サムライの遺伝子とは?
■新商品のパラドックス
■イグノーベル賞の受賞数に見る日本人の可能性
■絞め殺される”珍獣”の遺伝子
■脳の特性への理解と物事の成否
■大切な人を守るための脳科学
終章 「よい子のマーケティング」を脱し、サイエンスへ
■マーケティングが脳科学に出会うと何が起こるのか
■各章の要点をマーケティング視点で再整備する
■セグメンテーションとターゲティングへの提言
■ドーパミンにより悪徳商法の優良顧客になる事例
■狭すぎたマーケティングの範囲
■マーケティングのレベル感
■規範
■消費者の意思決定タイミングやきっかけを探る
■「文化」で片づけてきた国際マーケティングに普遍性を持たせる
■意識に上がらないものへのマーケティング諸概念の拡張
■未来のマーケティング
ブラックマーケティングの概要
序章は、脳科学の発展の概要を記憶に留めておくと、知らないうちに何者かに操られてしまう脳の働きへの理解の助けになるだろうと判断した経緯、意外知られていない「脳は自分で意思決定をしたがらない」という厄介な特徴などを解説。
よーするに、人間の脳は、じっくり分析してから意思決定を下すよりも、わかりやすいものに即時に応答する特徴がある。
その証拠に、実名でもない日本の口コミやレビュー・ネットの「最安値」表示や「☆の数」を見て商品の注文した経験はないだろうか?
このように、客の脳を惑わしたり、誘導したりすることで利益を得ようとする商売は昔から世界中にあります。
脳科学の知見が生活やビジネスに活かされ、消費社会の深層に潜んでいる「その気」にさせる仕掛けと、脳が「その気」になってしまう現象とを、つじつまの合う理論で結びつけ、より精度よく検証する必要があるのではないかと著者。
そんな中、著者が共同著者となる鳥山先生と出会い、鳥山先生の、
という問題意識を氏は持っていた。
昨今、鳥山先生のマーケティングフレームでは説明の難しい現象がたくさん起こっている。
・「釣り広告」
・「ステルママーケティング」
・「ホストクラブ狂い」
・「後妻ビジネス」
・「振り込め詐欺」
このような詐欺やビジネスなどは従来のマーケティングでは説明できない。
✓こういった現象がなぜ起きるのか?
✓何故脳がハマってしまうのか?
脳科学の知見をベースに解き明かすことを本書は目的とし、いろんなマーケティングの教科書を読んでも悪徳商法などは触れられておらず、マーケティングは「正しいことだけ」を述べる”規範の学”になってしまっている。
現代社会に横行する悪徳商法も含めて、従来のマーケティングの規範の外にある現象を紐解き、ブラックマーケティングの抑止になり、よりよい未来を寄与することになると考え、脳のメカニズムを詳しく検証していく。
中盤から、脳の構造とマーケティングを紐づける試みを行っている。
幸せの源泉であるセロトニンは精神状態を安定させる働きがあり、質の良い安らかな睡眠にも影響します。
セロトニンは人間らしい日常生活を送り、健康であれば、脳内でセロトニンは分泌されます。
「人との結びつき」を実感し、救われるような心地よさをもたらすオキシトシンの感受性を高める重要な物質もセロトニンで、「人との結びつき」が遮断され、孤立する場面に置かれると脳内のセロトニンが不足し、焦りや不安を感じた脳は、判断力や思考力を著しく低下させ、その状態にある場合は、他者の意のままに操られたり、いとも簡単に騙されてしまう危険があります。
「残り2点」や「期間限定」などもこのような脳の働きを刺激する商法で、得よりも損の方がインパクトが大きいとするプロスペクト理論は人間の消費行動は「得をしたい」という感情よりも、「損をしたくない」とする感情に左右されやすい。
何度も同じものをなくなるたびに買い足すような消耗品に効果絶大な商法に、赤札商法というものがある。
これは、アンカリング効果といい認知バイアスを利用した商法で、定価から赤字で安い値段を書き換えられた値札を見せられると「今買わないと損をしてしまう」と思わせる効果があり、客の焦りを引き出すテクニックなのです。
このように、人は「損をしたくない」という感情に左右されやすい。
行動経済学で言う「損失回避性」の理論でも証明でき、1万円を損をした時は、1万円を得をした時の2倍の心理的価値が生じます。
よーするに、1万円落とした時は、2万円拾ってネコババした時と同程度の心情的な影響という訳です。
また、いくら稼いでも幸福にならない理由に、他者との差に反応するという認知の性質があります。
大阪大学の研究では、年収1,500万円付近をピークに、2,000万円手前までゆるやかに幸福度が下がっていくことが示されているそーです。
よーするに、焦りや不安がバネになって、「もっと稼ぎたくても稼げず、全力を出し切っているのに稼げない」コトに対する閉塞感に支配され、内面が満たされないことが、一般的な年収の方より遥かに稼いでいても起こり得るということです。
セロトニンにより安心感を常に希求している可能性もあるのです。
マーケティングの基本的な目的は、「ニーズ」は現に存在しているもので、マーケティングで作り出すことは出来ないが、本人が気づいていない潜在するニーズである「ウォンツ」を顕在化することだとします。
しかし、もう一つ道があります。
それは、ニーズを作り出すことです。
不安を煽り、本人が気づいていない欠点を指摘して、「それは困りますよね?」「こうすれば解消されます」と持ち掛け、商品を売り抜ける方法です。
「気づかせる」という行為は「その気にさせる」とも表現でき、消費者の弱みや悩みを植え付ける効果もあります。
例えば、
✓体臭
✓口臭
✓薄毛
✓ムダ毛
などの身体的特徴はターゲットにしやすく、日本人は他諸国と比べ、非常に敏感になっている節があります。
また、将来の不安を煽る商法に点検商法があります。
点検商法とは、キャンペーンなどで無料と偽り、
✓床下
✓外壁
✓水道管
などを点検し、「異常が見つかった」と基礎工事の欠陥・シロアリ・配管の腐食など、いずれ放っておくと将来たいへんなことになると大変なことになるといった手口です。
よーするに、流行ってるなら、「みんなが選んでいる結果」ですから、それを「間違いない」と認識して乗っかるということです。
人間の行動は、必ずしも理性的に選択された結果ではなく、根拠が曖昧なものでも数さえ優れている雰囲気さえ感じたら妄信して追従してしまうってことです。
世界のマーケティングを牽引しているフィリップ・コトラーが普及させたフレームワークのSTP分析は、
セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(狙う市場の決定)、ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)の3つの英単語の頭文字をとって名付けられた分析法です。
この市場細分化の軸として捉えられていた、
デモグラフィック(人口統計的変数)
年齢・性別・家族構成・学歴・職歴など、人の変わらない基本情報を基にしたセグメント指標です。
統計調査などを基に判断します。
ジオグラフィック(地理的変数)
国・市町村・気候・文化・宗教など、地理的要因に絡む情報を基にしたセグメント指標です。
地図や国の調査結果などを参考に判断します。
サイコグラフィック(心理的変数)
価値観・性格・ライフスタイル・購入動機、などといった個人の心理に基づく情報を使ったセグメント指標です。
アンケート調査やヒアリングなどを行った結果を基に判断します。
ビヘイビアル(行動変数)
買い物の頻度・買い替えのタイミング・使用用途などといった個人の行動に焦点を当てた情報を使ったセグメント指標です。
ユーザーの行動追跡データなどを基に判断します。
という行動ベースで市場を細分化していたものが、本質がそうではなくて、じつは脳の性質や構造の個体差に起因したものだったらとしたらどうなるのか?
と著者は疑問を投げかけています。
ドーパミンは生理的な欲求に勝るほど依存度が強い。
報酬として与えられる成分で何らかのリスクや努力を伴って得た成果の方が脳にとってはより大きな快楽になります。
ドーパミンはギャンブルなどで良い経験をすることでハマってしまう原因にもなり、現在ではソーシャルゲームのガチャなどでも同様にドーパミンによる依存が指摘されます。
また、経済学的にここまでお金を突っ込んだんだから勿体ないと感じるサンクコスト概念が働き、二重でハマることになります。
ところが、更にソシャゲの場合は、他のユーザーの手前という概念もあり、勿体ないだけではなく、自分のキャラが見栄えが悪くて「みっともない」と感じる部分にも刺激しているので実は3重でハマっている可能性もあるということです。
ハマってしまった脳の暴走(依存症)の研究が進んでいなかった時代は、「心の弱さ」だとして、スパルタ式の矯正がメインでしたが、依存症の原因は「心」の問題ではなく、脳内の神経伝達物質のバランス異常が原因だとまでは判明してそーです。
このように中盤では、様々な市場心理を脳科学とフレームワークにハメ込もうと試みています。
終盤は、マーケティングを脳科学ベースで組み立て直したら、無意識のうちに避けていた悪徳商法などもすべて説明できるようになるとしてマーケティングはサイエンスに近づく!マーケティングの歴史を塗り替える可能性あり!
と著者は語っている。。。
ブラックマーケティング 著者 中野信子×鳥山正博 書評 賢い人でも脳は簡単にだまされる。を読むべきポイント
マーケティングのフレームワークは知っていてもマーケティングが有効とされている理由を知らない方におすすめです。
本書は、脳科学を主観点に話が展開されていますので、心理学に興味がある方も楽しんで読めるのではないかと思います。
昨今のマーケティングは、心理学と並列で考えられることが増えてきていますが、本書は、脳科学をベースにマーケティングを説明しているので、新しい気づきが多くあります。
著者の中野氏と鳥山氏がバトン形式で書き上げられていますので、まとまった厚い知識が欲しい方には物足りない内容ですが、小ネタが欲しい方にはお勧めです。
お馴染みの中野氏特有の日常生活に落とし込んだ例え話がされていますので、頭に入ってきやすい内容になっています。
ただし、脳科学が今後、マーケティング分野に採用されマーケティングの前提が変わっていく話ではなく、「脳科学」×「マーケティング」って可能性あるよねーって感じの内容になっています。
リアル市場で起きている著者の鳥山氏がいうマーケティングのフレームワークに収まらない手法は、古くはネットでは年々進化しており、ブラックマーケティングの神髄はネットにあるのですが、そこが深く語られていないのが残念です。
WEBマーケでは、本書が解明している内容はほぼ既知です。
そういう意味で、本書の読者が実際に「自分の意志」で購買をしていない事実を認識し、いかに資本主義社会には複雑に絡まり合った罠が張り巡らされているのかを想像するきっかけになればと思います。
「ブラックマーケティング」の書評を書いている筆者は、
他にも、飲食店開業コンサルタントとして、これまでたくさんの飲食人とお仕事をご一緒させて頂いております。
今ご覧になって頂いている記事がある「飲食マネジメント経営.blog」は、飲食業界のマネジメントを活用した有益な情報を発信するブログサイトです。
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